SOP(標準作業手順書)は、業務の効率化や作業の標準化に不可欠なツールです。企業が一貫した品質や安全性を確保するために、SOPの作成は重要です。
本記事では、SOPとマニュアルの違いや作成手順、活用のポイントについて解説します。SOPを活用することで、業務フローを明確にし、属人化を防ぎながら生産性を向上させましょう。
INDEX
1.SOP(Standard Operating Procedures)とは
SOP(Standard Operating Procedures)とは、作業内容や実施フロー(手順)について記述した指示書のことです。「SOP」という単語自体はあまり耳にする機会がありませんが、「作業手順書 」であれば、馴染みのある方も多いのではないでしょうか?
Standard Operating Proceduresを直訳すると「標準作業手順書」になります。SOPはすでに確立している製品の質や使い勝手を担保するために、現場の状況や作業内容、その手順を事細かに記録し、正しく再現することを目的としています。
SOPは多種多様な業界で幅広く活用されています。
【SOPの活用例】
- 製造業:機械の操作手順や製品の製造プロセスの標準化
- 医療業:治験や医療手順における遵守すべきプロトコルの確立
- 農業:農薬の安全かつ適切な使用方法の指示
など、SOPは各業界で品質管理や安全性の向上に寄与しています。
2.SOPとマニュアルの違い
SOPは馴染みがなくても、「マニュアル 」や「操作手順書 」であれば日常的に使っている、作っていると
いう方は少なくないでしょう。では、SOPとマニュアルにはどのような違いがあるのでしょうか?
SOPは日本語訳が「標準作業手順書」である通り、基本的な作業内容を手順通りに記したものです。
一方、マニュアルは手順をただ並べるのではなく、一つ一つの作業の注意事項や、その作業を含んだ業務全体に関するノウハウなど、困ったときに役立つTips(助言、ヒント、秘訣など)も含みます。
SOP(作業手順書) | マニュアル |
---|---|
基本的な作業内容を手順通りにまとめたもの | 作業の注意点やポイントなどナレッジまで記載されているもの |
誰が対象なのか、ターゲットで説明するのであれば、SOPはまだ作業に慣れていない、そのシステムの使い方を覚えていないなど、そのシステムやツールの習熟度の浅い人が、手順通りに進めていくために閲覧するものです。
それに対しマニュアルは、そのシステムやツールを使うすべて人が、「困ったとき」や「『もっと有効活用できないか』と考えたとき」にその解決方法やヒントを得るために開くものといえるでしょう。
そういった意味では、「SOP」より「マニュアル」のほうが、範囲やターゲットが広いといえます。
マニュアルと手順書の違いとは?作成のステップとポイントを紹介
3.SOPを作成するメリット
SOPを作成することで、企業はさまざまなメリットを享受できます。特に業務の効率化や属人化の防止、教育コストの削減、安全性の向上が大きな効果として挙げられます。
3-1.業務の効率化
SOPは業務フローを明確化し、作業手順を標準化することができます。これにより、従業員は手順に従って業務を遂行できるため、時間を無駄にすることなく効率的に作業を進められます。
例えば、製造業では、SOPに従うことで生産ラインの遅れやミスを減らすことができ、全体の生産効率を高められます。結果として、企業全体の業務効率の大幅な向上が期待できる点が大きなメリットといえるでしょう。
業務効率化の基礎知識まとめ|役立つフレームワークやツールを紹介
3-2.業務の属人化の防止
SOPは特定の個人の知識やノウハウに依存することなく、誰でも同じ業務を遂行できる仕組みを提供します。例えば、ベテラン社員が退職しても、SOPがあれば新しい担当者も同じ手順で業務を進められ、業務の継続性が保たれます。属人化のリスクを排除することで、企業は安定した運営が可能になります。
3-3.教育時間の短縮
新入社員や業務に不慣れな社員に対する教育コストを大幅に削減できます。SOPを用意しておけば、標準的な作業手順をスムーズに学ぶことができるため、教育の時間も短縮されます。
例えば、製造業や医療業界では、新人がSOPに従って作業を覚えることで、実務に即したスキルを早期に習得でき、早期戦力化が期待できます。結果として、教育担当者の負担も軽減されるでしょう。
3-4.安全性の向上
SOPに沿った作業を実施することで、ミスを防ぎ、安全性を高めることができます。特に、医療や製造業など安全性が重要視される業界では、SOPがあることで、誤操作や不適切な作業が減り、事故のリスクを最小限に抑えられます。正しい手順を示すSOPは、ミスによる重大な事故を未然に防ぐ重要なツールといえるでしょう。
4.SOPを作成する手順
SOPを効果的に作成するためには、計画的なステップを踏むことが重要です。業務フローの整理からフォーマットの選定まで、SOP作成には押さえるべきポイントがいくつかあります。
4-1.業務のフローや課題を整理する
SOPの作成は、まず対象となる業務のフローや課題をしっかり整理することから始まります。選定した業務について、どの部分が課題となっているのかを洗い出し、改善点を明確にします。例えば、生産ラインの一部に時間がかかりすぎている箇所があれば、その手順を標準化し、改善策を講じます。このように、課題を具体的に整理することで、効果的なSOPを作成できるようになります。
4-2.使用者や利用場面を決める
次に、SOPの使用者や利用する場面を明確にしましょう。使用者が新入社員なのか、熟練者なのかによって、SOPの内容や言葉の使い方が異なります。また、業務が行われる場所も考慮する必要があります。例えば、新入社員向けのSOPでは、基礎知識の説明を丁寧に行う一方、経験者向けには詳細な説明は不要かもしれません。対象者に応じた適切な内容を作成することが重要です。
4-3.フォーマットやテンプレートを決める
SOPのフォーマットやテンプレートは、業務の特性に応じて選びます。例えば、作業手順をシンプルに示したい場合は「ステップ式」が適しており、判断が必要な業務には「フローチャート式」が有効です。フォーマットを統一することで、SOPの可読性が向上し、利用者にとってわかりやすいものになります。
【SOPによく使用されるテンプレート例】
・ステップ式 ∟作業手順を箇条書きにまとめたもの ・段階的ステップ式 ・フローチャート式 ・チェックリスト式 |
SOP作成では、マニュアル作成と同じテンプレートが活用できるので、マニュアル作成に使えるテンプレート もあわせてご確認ください。
4-4.対象業務をステップごとに記載する
次に、業務手順をステップごとに具体的に記載します。漏れがないように、すべての作業手順を1ステップずつ記載し、重要なポイントには補足説明を加えます。また、必要に応じて表紙や目次、用語集、参考資料を付け加えると、より実用的なSOPに仕上がります。
4-5.運用方法を決める
SOPを作成したあとは、その運用方法や更新手順を決めておくことが重要です。運用のフィードバックを定期的に行い、業務の変化に応じてSOPの内容を更新しましょう。例えば、新しい機器が導入された場合、その操作手順をSOPに加え、全社で共有します。継続的な改善が、SOPの効果を最大化する鍵となります。
5.SOPを作成する際のポイント
SOPを作成する際には、ただ手順を記載するだけでなく、誰でもわかりやすく、効果的に運用できる内容にすることが重要です。
ここでは、SOP作成時に押さえておくべきポイントをいくつか紹介します。簡潔な文章や視覚的な補助、手順の詳細記載、そして社内での適切な共有が、SOPを効果的に活用するための鍵となります。
5-1.簡潔で読みやすい文章にする
SOPを作成する際に文章は必須になりますが、それぞれの文章が冗長になってしまうと読み手に負担がかかります。文章ひとつひとつを簡潔にして読みやすく整えておくことは、SOP作成において良い例だといえます。ひとつの文章に込める情報をひとつにする「一文一義」を意識することで、読み手が内容を理解するスピードが早くなるでしょう。
もし、どうしても文章が長くなってまとまりがなくなってしまいそうな場合は、要点をリスト化して箇条書きにすることも有効です。「この内容を担当者が読んだときにどこか引っかかる点はないか」を意識しながら、文章を考えましょう。
5-2.画像や動画を適切に使用する
SOP内に文章だけでなくイラストや動画を適宜入れることも良い例として挙げられます。細かな設定方法などはイラストや動画を使用することで、文章だけで説明するよりも理解度が上がるからです。
もちろん、むやみにイラストや動画を挿入しても、何が一番重要なのか伝わらず全体的にまとまりのない内容になってしまいます。「説明する内容をどのように表現すればいいのか」を念頭に置いて、適度にイラストや動画を使用しましょう。
5-3.図解やフローチャートがわかりやすく整理する
前述しましたが、SOPにおいて図解やフローチャート、リストなどを活用することも良い例として挙げられます。文字数が少なくても、図解やフローチャート、リストに要点がまとまっていると、該当する業務全体の様子を把握しやすくなるからです。
しかし、ただ図表やフローチャートにするだけでは、十分に要点が伝わらない可能性があります。まずは「この業務内容の中で何を一番伝えたいのか」をリストアップし、伝えたい内容を明確にしてから図表やフローチャート、リストの作成に取り掛かりましょう。
5-4.手順を詳細に記載する
SOPは、業務内容や進行上の手順について詳細に記す必要があります。良いSOPを作成するためには、SOP作成前に対象業務がどのように進んでいるのか詳細に把握し、SOP作成後には対象業務がSOPに記載した通りに進んでいるのかをチェックする必要があります。
また、SOPは「完成して終わり」というわけではありません。業務内容は時が経つと変化していくため、SOPに記載されている業務内容と実際に行われている業務が違ってくる場合があります。その際は、現在の業務フローに適した内容に修正していくことも良いSOPを作成するうえで必要な作業だといえます。
5-5.運用方法を社内全体に共有する
SOPを作成しても、社内で適切に共有されなければ、その効果は発揮されません。まずは、SOPを誰がどのように利用するのか、またその利用によってどのような効果が得られるのかを社内全体に周知することが重要です。
例えば、製造業の現場では、新しいSOPが導入された際に、全従業員に対して周知徹底を行うことが必要です。また、SOPは作成した時点で終わりではなく、運用状況を定期的にフィードバックし、必要に応じて内容をアップデートすることも大切です。こうした継続的な見直しと共有が、SOPの効果を最大限に引き出します。
6.SOPを作成する際の注意点
ここで、SOP作成の際の注意点を挙げていきます。SOPがこの例に当てはまっていないかどうか、作成後には必ずチェックしましょう。
6-1.文字だけにしない
SOPの対象となるのは、現在の業務担当者だけではありません。新しく入社してきた従業員や異動してきた従業員、アウトソーシング先など、対象業務に関してまだまだ深く理解しきれていない方も含まれています。そのため、文字だけでSOPを作成しても読み手に心理的負担を与えてしまい、結果的に活用してくれないといったおそれがあります。
SOPは業務内容を全く知らない人でも理解できるように、わかりやすい構成にすることが必須です。後ほども詳しく解説しますが、文字だけでは伝わりきらない部分には図解や表、フローチャートを適宜活用して見やすいSOPになるように作成しましょう。
6-2.専門用語を多用しない
SOPはその業務についてまだまだ理解しきれていない方も対象者として含まれています。そのため、業務担当者の間では当たり前に使用している専門用語をSOP内の文章にちりばめてしまうと、業務歴が浅い従業員が理解するスピードも遅くなってしまいます。
もちろん、業務を理解していくにしたがって覚えていかなければいけない専門用語もあります。その場合は専門用語の近くに注釈を入れるなど、初心者でも理解しやすいような配慮をしてあげると良いでしょう。SOPを新入社員やその業務の全くの初心者が読む場合があることを考えると、難解な文章は適切ではありません。平易な文章で記述していくことを心がけましょう。
6-3.業務の流れは順番通りに記載する
SOPは「標準作業手順書」とも呼ばれる資料のため、業務内容を順番に記述していく必要があります。業務の順番があちこちに飛んでしまうと全体の流れをつかむことができないのでSOPとしての効果を発揮することができません。全体の流れを把握しやすいように、実際の手順に合わせたSOPの作成を心がけましょう。
7.SOPやマニュアルの作成のコツ
SOPを作成する際には、いくつかの重要な注意点を意識することが求められます。特に、文字だらけの内容や専門用語の多用は避け、誰にでもわかりやすく整理された手順書を作成することが重要です。ここでは、SOP作成時に注意すべき点を具体的に説明し、効果的なSOPの作成方法を紹介します。
7-1.SOP作成のコツ
SOP(標準作業手順書)の作成のコツは、MECE(ミーシー:漏れなく重複なく)に作業内容を網羅し、正しく作業する順番に並べていくことです。
例えば、すでに多くの人が実践している通り、SOPを作る必要のあるウェブシステム(ウェブブラウザ上で操作する何らかのシステム)をSOP作成者が使いながら、画面キャプチャを取得し、その画面ごとに操作方法をメモしていきます。次にクリックするボタンはどれか、どの操作が必須かなど、が一番重要な要素となります。
大事なのは、ついうっかり画面キャプチャを撮らずに先に進んでしまったり、分岐があるのに忘れてSOP作成作業を終わらせてしまったりしないことです。先に述べたように画面キャプチャもMECEである必要があります。例え1ページ、一つのボタンのクリックが抜けただけでも、そこで実際の作業フローは途切れてしまい、わけがわからなくなってしまうシステムは少なくはないでしょう。
そのため、画面キャプチャを取得したらそのままエクセルのシートに貼り付けて・・・という風に、「画面キャプチャ」と「ファイルに添付」の同じような繰り返し作業を淡々と行うことになります。単調な作業故にケアレスミスが起こってしまうと最初から確認してと、「誰でもできるけれどうんざりする苦痛な作業」にSOP作成作業は認識されてしまうのです。
7-2.マニュアル作成のコツ
マニュアル作成で重要なのは、多くの人のナレッジを集結させることです。先ほどのSOPとの違いにある通り、マニュアルだからこそ必要な要素は、ただ正確な手順を追うだけでなく、誰にでも役立つようなノウハウやヒントも一緒にまとめることです。
そのため、SOPと異なりマニュアル作成者は誰でも良いわけではありません。ある程度そのシステムやツールを使い慣れている人ではないと、ノウハウは存在しないからです。
しかし、逆説的ではありますが使い慣れてしまった故に、迷うところや躓き(つまづき)に気づかない可能性もあります。「どこで初心者がひっかかるのか」、「みんなが迷うところはどこか」などは、かえって初心者の方が気づくものです。その場でメモしないと忘れてしまうものなので、「マニュアルを作る」ということを適度に意識することも必要かもしれません。
よって、マニュアル作成は一人で行うのではなく、複数で担当したいもの。たたき台の上に「自分はここが難しいと思う」、「ここでこうすれば簡単だよ」と、初心者と習得者両者の意見が加わることが望ましいのです。
見やすいマニュアルの作り方は?レイアウトのコツやNG例を紹介
8.業務改善のためにSOPやマニュアルを有効活用しましょう
SOPやマニュアルは、業務の効率化や品質向上に欠かせないツールです。作業手順を標準化し、業務の属人化を防ぎ、トラブル解決、業務全体の理解をサポートします。これらを適切に活用することで、新人の育成がスムーズになり、ミスの減少や業務の安定化が期待できます。また、定期的に更新することで、変化する業務にも対応可能です。SOPとマニュアルを活用して、企業全体の業務改善を進めましょう。
しかし、業務改善につながるSOPやマニュアルを作るには、一定の工数が発生してしまいます。SOPやマニュアルを作成する上での課題は、必要とする稼働が主業務でない企業がほとんどで、意識的に時間を確保し工数をかけることが難しいという点です。
当初は業務効率を意識してSOPやマニュアルをきちんと作成したとしても、ちょっとしたシステム変更での更新に手が回らず、気が付いたら古い(現実に即さない/使えない)SOPやマニュアルになってしまっている・・・ということも珍しくないはずです。
また、課題意識を感じた、個人それぞれが必要なSOPやマニュアルを作ったため、企業として活かせなかったり、「あるはずなのに誰も知らない」と行方不明になったり、どれが最新ファイルなのかわからなくなることもあるでしょう。
そこでおすすめしたいのが、ツールを使った「SOPやマニュアル作成の自動化」です。
ウェブシステムやパソコン内のアプリケーションを使いながら、自動的に画面ごとのキャプチャを取得し、それを取得順にファイルに添付してくれるツールがあればどうでしょうか?自動的に画面が変わるたび、操作をするたびにその記録をするので、MECEに画面キャプチャが撮影、正しい順番で整理できるのは間違いがありません。
また、「SOP/マニュアル自動作成ツール」であれば画面キャプチャをただ取得するだけではなく、SOPやマニュアルに適したテンプレート(フォーマット)機能を有し誰が作っても同じデザインに成型できたり、パワーポイントやワードファイルとしてだけでなく動画として書き出せたりするものもあります。
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