RPAガバナンスはなぜ重要なのか?整備のポイントを徹底解説
2019年11月21日
RPAの導入に際し、ガバナンスによる内部統制は必須です。RPAは業務効率化による生産性向上が実現できますが、その一方で、導入時には既存システムとの整合性、適用業務やロボットの管理、障害・災害対応などさまざまな課題があります。 今回の記事では、RPAガバナンスのルールを取り上げ、導入時の課題と、それらを解決するRPAガバナンスの整備ポイントを解説します。
RPAガバナンスとは?
ガバナンスとは、日本語で「統治」、「支配」、「管理」といった意味の言葉です。 よくコーポレートガバナンスなどの言葉を耳にしますが、それは企業統治を意味し、企業の不正行為を防ぐためにルールを定め、業務や会計などを監視することを指します。本記事でご紹介するRPAガバナンスは、ツールの導入目標の達成と導入効果を最大限得ることを目的とした、RPAを安心して活用するためのルール・仕組み作りのことです。
RPA導入のメリットは多く、政府による働き方改革の推進などに伴い、世間から注目されています。 RPAを上手く活用できれば、ルーティンワークだけではなく他の業務にも用いることができ、現在大企業を中心に年間数百万時間も労働時間の削減につながったという事例も出ています。しかし、RPAはただ単純に導入するだけで効果を得られるものではないのです。使い方次第では導入効果を感じられないだけではなく、課題解決すら滞ってしまい、更には新たな課題を生むことにもなりかねません。 そのような事態に陥らないようにするために必要となる対策の1つが、RPAガバナンスです。
RPAガバナンスは、RPAの使い方などをガイドラインとして設け、それに従って活用していくことのみを指すわけではありません。 RPAを利用して導入効果を最大限得るという視点と、RPAを安心して活用するという視点のバランスを状況によって使い分ける、いわば経営視点に立った仕組みがRPAガバナンスです。
RPA導入における課題
先述の通り、RPAは導入するだけで自動化が進み、生産性が向上するような魔法のツールではありません。 導入には、いくつかクリアしなければならない課題も存在します。ここでは、導入に際して考えられる課題を解説します。
RPA適用業務が管理・把握できない
RPAを導入した多くの企業が直面する課題はこの点です。企業として、設計・開発上のルール制定や方針が定まっていないまま導入してしまい、RPAロボットが部門レベルで自由に開発されていることが背景に考えられます。 RPAを適用させる業務を周知徹底していないことからRPAが量産され、それがさらなる社内の無秩序を誘発してしまいます。 現場レベルでは「効率化できた」といった声が上がっているかもしれませんが、これでは経営視点に立った企業全体の業務改善としては不十分で、後々大きな問題に発展するリスクがあります。
不適切な業務をRPA化してしまう
RPAには人の判断が必要となるような、ルールがきちんと定められていない処理には対応することが困難です。 AI(人工知能)との組み合わせにより、この判断部分もできるようになってくることが期待されていますが、現状はまだ完全にはそのレベルには至っておりません。 対応しきれない例外処理があった場合でも、RPA自体は気づくことがなく間違った判断で処理を続行する可能性があるため、RPAに適している業務かどうかをきちんと選定してから適用することが大切です。
RPAの運用自体が属人化してしまう
RPAを利用してソフトウェアロボットを業務担当者が作成・管理した場合、セキュリティ対策の観点が疎かになってしまうことがあります。 RPA化の範囲によっては、作成したロボットが企業のセキュリティの中核を担っている可能性もあるでしょう。 そんな中、RPAロボットの管理者が交代となり、引継ぎが正しくなされないと、RPAの運用状況が属人化する事態に陥り、結果としてブラックボックス化してしまう恐れがあるのです。
ロボット・システム停止時のバックアップ体制ができていない
きちんと準備を行い、RPAを正しく導入できたとしてもそれで終わりではありません。 導入後もあらゆる問題発生に備え、ロボットやシステム停止時のバックアップ体制は万全にしておきましょう。 システム障害や災害発生時にロボットが停止してしまうことで、ロボットが担う業務が長期的に止まってしまう可能性があります。
ロボットの不正使用
RPAロボットを導入すると、ツールであるが故に不正使用される可能性がゼロとは言い切れません。 先に挙げたセキュリティ面での課題などからロボットを介して不正アクセスが行われたり、管理不十分により情報漏洩が発生してしまったりするなどのリスクが考えられます。
RPAガバナンス整備のポイント
企業の業務改善に大きく貢献できる反面、様々な課題もあるRPAですが、RPAガバナンスをしっかりと行うことで、リスクを低減することができます。 そしてガバナンス整備にはポイントがあります。順を追って説明していくので、整備の際の参考にしてください。
全社レベルでの統制
RPAをなぜ導入したのかという「目的」や、RPA導入によって達成したい「目標」を明確化しましょう。本来はRPAを導入する前にきちんと設定しておきたいものですが、これらが不明瞭なままでは、先述した視点のバランスや統率のとれたガバナンスを作成できません。
そして、ガバナンスを作成する際には具体的であり、且つある程度中長期的な導入方針やルールと導入計画を策定しましょう。 こちらが明確になっていると、社員が判断に困ったときにも、方針に沿った扱い方をしてくれます。
ロボットに関して誰が責任を負うのかといった問題を含んだ、職務権限の管理も忘れてはいけません。 多くの場合は、セキュリティに関するノウハウを持った情報システム部門に一任することになるでしょう。 現場の業務担当者にどこまで利用を許可するのか、もしくは担当者が責任を持ってロボットを管理するのか、責任の所在と範疇を決めておくべきでしょう。
そして、様々な社員がRPAツールを活用する場合、RPAに関する社員教育をしなければ、せっかく便利に扱えるツールを導入しても自社社員は使いこなせません。 販売元が開催しているセミナーに参加するか、自社で社員向けのセミナーを開くなどの対策をとりましょう。
さらに部門間の情報連携も重要です。運用部門に管理を一任せず、情報システム部門と問題を共有し合うことで何らかの障害が発生した際にスムーズに対応できます。RPAツールの運用状況をブラックボックス化させないためにも、現場と管理部門でこまめに必要な情報を共有し合いましょう。
ここまでのポイントをまとめると、全社レベルでの統制に関するポイントは以下のようになります。
- RPA導入の目的・目標の明確化
- 具体的な導入方針・ルールと導入計画の策定
- 職務権限の管理(ロボットの責任の所在を含む)
- RPAツールに関する社員教育
- 部門間の情報連携
ITレベルでの統制
RPAなど、新規のシステムを導入する際は、既存システムや社内インフラに少なからず何らかの影響を及ぼすことが想定されます。 どの程度、どのような影響が及ぼされるのかを情報システム部門などと連携して評価しておきましょう。また、既存のITシステムと連携させたRPAの導入計画を策定しておくことも重要なポイントです。
他には、障害・災害などのトラブルが生じた際にどのような対応を取ればよいのかをあらかじめ決めておきましょう。 準備をきちんとすることでトラブルの発生頻度を低減することはできますが、ゼロにすることはできません。 RPAに多くの業務を任せている場合などは特に、ロボットが停止してしまった場合の被害も甚大なものになります。 事前にトラブルシューティングを行っておくことで、導入後に何らかの障害が発生した際の対応がスムーズになります。
また、セキュリティ面でのアクセス管理は不正アクセスを防ぐために必要です。ロボットのIDをどのように管理するのかを想定しましょう。 他に管理すべきは、RPAツールのバージョンです。新しいバージョンが出ても既存システムとの相性が悪かったり、早々に新しいバージョンに切り替えたりする判断も必要なポイントです。 闇雲にバージョンアップするのではなく、自社の環境に不都合が起きないかは意識しておく必要があります。
ここまで解説したITレベルでの統制ポイントは以下の通りです。
- RPA導入による既存システム・インフラへの影響の評価
- 既存ITシステムと連携したRPA導入計画の策定
- 運用ルールの制定
- 障害・災害対応
- ロボットのアクセス管理(ロボットID管理)
- RPAのバージョンに関する判断
業務レベルでの統制
業務レベルでの統制は、導入したRPAをいざ運用しようとした際に決めるべきことです。RPAツールでは、多くの場合ログを取得できる仕様になっています。 ログを取得しておけば、問題発生時にどこで誤作動が起こったのかなどの原因を探れます。業務レベルでの統制ポイントは以下の通りです。
- ログ取得ルールの制定
- ログの取得と保存
- ログを基にRPA処理が正しいかどうか検証
RPAガバナンスの整備に活用できるツールとは
RPAガバナンスとは、RPAの導入効果を高めつつ、想定されるリクスへの対策を万全にするための仕組み作りです。 全社レベル・ITレベル・業務レベルといったそれぞれの段階に応じた統制を設けることがポイントです。
そしてRPA導入時には、適用される業務内容をきちんと把握し、細かく運用方法をマニュアル化する必要があります。 これらは適用業務の見直しや誤処理によるRPAツールの修正が必要になった際も、迅速な対応を可能にしてくれるため、必要な措置だと言えるでしょう。
RPA導入支援ツールの「D-Analyzer(ディーアナライザー)」では、RPA対象業務の作業ログを自動収集・解析し、業務プロセスとして可視化してくれるので、RPAガバナンスの運用にも活用可能です。導入前の課題把握だけでなく、導入後の効果検証やRPAの運用に関して定量的な可視化ができます。 ガバナンスを整備する上での各判断にも効果が期待できますので、まずは体験版などで動作を試してみて、RPAガバナンスの運用に役立ててください。