人手不足や働き方改革などの影響で、企業を取り巻く環境は激しく変化しています。このような状況下で組織全体の利益拡大を目指すには、適切な施策を実行して業務効率化を実現する必要があります。しかし、自社の課題を正確に把握するには、現場で働く社員の「気づき」が欠かせません。
そこで本記事では、業務改善における気づきの重要性、気づきを業務改善に活用する方法、社内で従業員の気づきを促すポイントを解説します。ボトムアップの改善活動を検討している方は、ぜひご確認ください。
INDEX
1.業務改善において小さな気づきが重要な理由
まずは、従業員の小さな気づきが業務改善にもたらすメリットを確認していきましょう。現場の気づきがなければ適切な業務改善を行うことはできません。
1-1.現場の従業員が問題点に気付きやすくなる
従業員の気づきや違和感を抽出できれば、現場で働く人の視点から業務改善を行うことができます。現場が改善活動の主体となることで、実情に即した取り組みが行いやすくなります。もしも現場社員が問題点に気付かない場合、適切な業務改善は行われません。業務改善を成功させるためには、従業員一人ひとりが自らの気づきを上層部に提案できるような環境(ボトムアップ)が必要なのです。
一方で、トップダウンの手法による改善策は、必ずしも適切な解決策を提供できるとは限りません。上層部は現場の事情を細かく把握しているわけではなく、何が問題なのか特定することが難しいからです。また、トップダウン方式は従業員の不満が生まれやすい面もあり、問題解決につながらないおそれがあります。
そのため、業務改善においては、従業員の気づきを尊重するほうが得策でしょう。
1-2.業務改善の目的を考えるきっかけになる
従業員の気づきが尊重される現場であれば、業務の問題点と改善の目的が明確になり、実践的な改善案を考えられるようになります。現場に改善活動を浸透させるには、業務改善の目的を経営層と現場で共有することが重要です。
反対に、上層部が本質的な問題点を理解しないままに方針を打ち出すと、目的と手段が入れ替わってしまうこともあります。
例えば、上層部が自社の高コスト体質の改善を目的として、各部門のリーダーにコスト削減の指示を出したとします。続いて、部門リーダーがランニングコストの削減を図るために、現場に新システムの導入を指示したケースを考えてみましょう。
この場合、現場の従業員は業務改善の本来の目的を理解できず、新システム導入そのものが目的だと認識する可能性があります。導入コストとランニングコストの兼ね合いを考える機会も失われるため、業務改善は失敗してしまうこともあるでしょう。
1-3.業務改善を従業員が自分ごととして認識しやすい
従業員の小さな気づきを業務改善に活用することで、従業員が自分ごととして認識しやすくなります。業務改善の成果が自分の業務に直結することが分かれば、改善意欲を持ちやすくなるからです。例えば、業務改善の成功によって自分の業務量が変わる場合、関心を持つ人は多いでしょう。
また、従業員の小さな気づきが反映される職場であれば、トップダウンではなくボトムアップの改善活動を行いやすいです。会社からの指示だと自分ごとだと感じづらいこともありますが、改善する必要性を感じる状況だと従業員は主体的に取り組めるようになります。
2.気づきを業務改善に活かす方法
気づきを問題解決に活かすには、提案内容によって分類・整理を行うことが重要です。リソースや時間が限られている以上は、気づきに優先順位をつけたり、実現可能性を検討したりする必要があるからです。従業員の気づきが出揃ったら、以下のように分類しましょう。
1.従業員が対処できる問題
2.対応に時間や費用がかかる問題
3.会社の経営判断が必要になる問題
例えば、「ある部門で作業の重複が発生している」という気づきがあったとします。この場合は、マニュアルやチェックシートに作業範囲を明記するだけで解決できる可能性があるため、1に分類することができます。
ただし、重複している作業をパソコンなどから一目で確認したい場合には、クラウド型サービスの導入が必要になることもあるでしょう。業務担当者の勤務状況を可視化できる代わりに導入コストがかかります。つまり、業務の現状や改善の目的によっては、2や3に分類される可能性もあるのです。分類の判断に迷う際は、チームリーダーや従業員の話し合いで決定するようにしてください。
いずれにしても、分類作業を行うことで提案を実行した場合の費用対効果などが明らかになります。改善効果が大きいものや業務の根幹に関わる問題については、特に優先的に取り組むべきでしょう。
そのため、業務改善を実現するには、数ある気づきの中から自社にとって重要な問題を選ぶことが大切です。
3.従業員に業務改善に役立つ気づきを促すためのポイント
従業員の気づきを引き出すためには、経営側の支援も欠かせません。ここでは気づきを促すための3つのポイントを紹介します。
3-1.気づきを共有しやすい仕組みを作る
従業員が思ったことや気付いたことを気軽に共有できる環境と仕組みと整えましょう。具体的には、以下のようなアプローチが考えられます。
・気づきを記載するための管理シートを作る
・従業員と上司で1on1ミーティングを行う
・目安箱を設置する
・社内アンケートを実施する
従業員の思いや要望を吸い上げるシステムを作ることで、組織全体で気づきを共有できるようになります。
注意点としては、従業員の本音を引き出せるような風通しの良さが土台となることです。上記の仕組みづくりも大切ですが、従業員の気づきを尊重する姿勢や、上司と部下の信頼関係は欠かせません。仮に、現場の気づきに対して経営側がネガティブな評価を下してしまうと、従業員のモチベーションは低下してしまいます。
3-2.従業員の自発性を引き出する
従業員の要望をヒアリングすることは重要ですが、それだけでは一人ひとりの当事者意識は高まりません。そのため、従業員が主体的に業務改善に取り組めるように、達成感を得やすい環境を整えましょう。具体的には、従業員の気づきを適切に評価し、迅速に業務プロセスに反映することが大切です。
また、従業員の改善意欲を高めるためには、経営層の一方的な判断を現場に押し付けないことも重要です。トップダウン方式の業務改善を採用すると、従業員がやらされている感覚を持ちやすくなり、行動に移してもらえないためです。業務の現状を最も把握しているのは現場の従業員なので、ボトムアップで業務改善を実施することが重要です。
3-3.従業員のメリットにつなげる
現場の従業員に業務効率化のメリットを示すことで、積極的に改善活動に取り組んでもらえるようになります。メリットの具体例は以下などがあります。
・労働時間が短くなり仕事が楽になる
・業務負担が軽減する
・帰宅時間が早くなる
・プライベートな時間が増える
このように、従業員が働くモチベーションの源泉は、仕事と直接関係がない場合もあります。仕事を効率的に終わらせて、育児・介護など家族との時間を大切にしたい従業員も多いでしょう。企業全体の目標は業務の生産性を向上させることですが、個人のメリットについても共有することをおすすめします。
また、業務改善に取り組む時間を労働時間に組み入れることも大事です。業務の改善効果を業績として評価すれば、従業員は自分ごととして改善活動に取り組みやすくなります。
4.業務改善を成功させるには従業員一人ひとりの気づきが重要
業務改善を成果につなげるためには、従業員の気づきを基に自社に合った施策を実行することが大切です。上層部の方針も重要ですが、まずは従業員が気づきを共有できるシステムを構築することで、解決すべき課題を洗い出しましょう。そうすることで、自社で活用すべきツールや採用するアイデアも明確になります。あとは長期的な視点でPDCAサイクルを回していけば、生産性向上につながる可能性が高くなるでしょう。もしも課題に対する有効な改善策が思いつかない場合には、以下の記事も参考にしてみてください。
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