ライフスタイルに合わせて仕事を変え、現状の能力よりも少し高いところを目指す転職がある一方、職場の人間関係やトラブルによってやむを得ず転職・退職する人も少なくありません。人事異動や転職・退職が発生する場合、これまでの業務を前任者からスムーズに後任者へ引継ぎを行うことが必要であり、企業にとってもこの引継ぎ業務は重要なものとなります。
さらに、前任者しかわからないことを正確に後任者へ共有しなければいけません。仕事の引継ぎを確実に実行することで、取引先と信頼関係を継続的に築くことができ、引継ぎ不足によるトラブルも未然に防げます。今回は、異動や転職によって必要となる業務の引継ぎについて、やるべきことや必要な資料などについて説明します。
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異動や転職での退職においては引継ぎマニュアルが必要
異動や転職による退職は、仕方のないことですし誰も止めることはできません。ただ、このような場合には、前任者から後任者への引継ぎ業務が必要であり、後任者へ向けて業務内容を文書化する必要があります。
口頭での引継ぎだけでは漏れが発生する可能性が高いので、業務引継書を作成しましょう。
また、引継ぎ書を作成したのみでは意味がありません。よくあるのは、引継ぎ書は作成してもらったものの、読んでみても作業内容が不明瞭で、引継ぎになっていないケースです。前任者は引継ぎ書をもとに後任者へ説明する場を設け、漏れなく引継ぎを実施することが求められます。
その際は、双方が積極的にスケジュール調整し、引継ぎの進捗度を測りながら進める形になるでしょう。期間的には1週間程度は必要です。
引継ぎマニュアル作成に記載する内容
では、引継ぎ資料にはどのような内容を記載すべきでしょうか。
大きく分けて、社外業務に関する内容と社内業務に関する内容の2つのポイントを押さえているものが良い資料と言えます。
社外業務に関する内容
社外業務に関する引き継ぎは会社全体の信用にもつながる大事なものです。後任者に対して前任者がきちんと引き継ぎを行わなければ、社外の人間からいい加減な会社だと思われ、今後の取引にも影響してくるかもしれません。
取引先の情報
企業間の取引において取引先の情報は大変重要です。前任者がどのような業務を誰と実施していたのか、実施している業務の進捗や課題、関係先の連絡先を正確に記載します。さらに定例で実施していた報告会議や進捗会議の内容、取引先企業の特徴、担当者の性格など細かく共有しておけば後任者も把握しやすいでしょう。
社内業務に関する内容
社内向けには、ステータスの記載があるフォルダやファイルはさまざまなものがあります。それらの社内業務に関する引き継ぎマニュアルは1つにまとめるのではなく、項目ごとにフォルダやファイルを分けておきます。
後任者が必要に応じて情報を閲覧できるよう、データの見方を共有するのも必要です。そして、社内業務における進捗、課題、リスクを明確に記載していきます。
年間・月間の業務スケジュール
業務手順を記載する前に、年間・月間の業務スケジュールを記載していきます。具体的には、以下の内容を記載します。
- 年度始めから終わりまでの年間スケジュール
- 月ごとの業務スケジュール
業務スケジュールを記載しておくことで、現在はどのような状況にあたる月になるのか、今後はどのような予定があるのかを把握することができ、後任者が置かれている状況をいち早く理解できるます。
業務の流れ・手順
具体的な業務内容を「事前の準備→作業→作業後の処理」など、流れに沿って記載しましょう。
流れに沿わず、例えば重要なことを先に書くというようにしてしまうと、最後まで読んでいかないと業務内容を理解することができず、どのような順番で業務を行っていけばいいのかも理解しにくくなります。
引き継ぎマニュアルとは別にシステムの取扱説明書などがある場合には、引継ぎマニュアル上ではシステムの操作手順は簡単にまとめておき、別にシステム取扱説明書があることを併記しておくと分かりやすくなります。
また、それぞれの業務の優先度合や、日頃気づいたことや自分なりのノウハウがあれば、ここで盛り込んであげると後任者も迷うことが少なくなるでしょう。
トラブル事例
トラブル事例を記載しておくことも大事です。
後任者にとってトラブルが発生したときの対応方法は不安になるものです。業務に慣れていれば自然と対応できるかもしれませんが、引き継いだばかりのときにトラブルが発生すると、対応に時間をとられることとなってしまいます。
そこでよく起こりがちなトラブル事例を記載しておき、トラブルが発生したときに業務に慣れていなくてもすぐに対応できるようにしておきましょう。
その際、自身が在職中には起こらなかったトラブルでも、過去に発生して今後も発生しうるトラブルは、忘れずに記載しておきましょう。
「単にこんなトラブル事例があった」という内容だけでなく、以下のような項目に関する内容も触れておくほうが親切です。
- トラブル発生が想定されるポイント
- トラブル事例の影響範囲・対処法
- トラブルが発生したときにサポートしてくれる部署名・連絡先
業務に関連する部署との連絡先
後任者が関わる案件は「誰が」「どの」業務に関係するのかを明確にして記載。業務に関連する部署の連絡先一覧にまとめて記載しておきましょう。後任者が他の部署に相談しなければなくなったとき、いちいち調べなくても一覧を見るだけで誰に相談すれば良いのかがすぐにわかるようにしておくことが大事です。
資料保管場所
引き継ぎ資料として掲載しているデータや資料がどこに保管されているかは明確に記載しておきましょう。
データであれば例えば、どのファイルサーバーの何という名前のフォルダに保存されているのか。資料であれば、資料室の何というファイルの何ページに保管されているのかなど、詳細に記載しておくことが重要です。
引継ぎマニュアルにデータや資料の名前は書いてあっても、保管先が曖昧では後任者も戸惑ってしまいます。もし前任者が社内で異動したのであれば、念のために後任者に向けて連絡先も記載しておくといいでしょう。
近しい人への周知も忘れずに
前任者から後任者への引継ぎを実施すること以外にも、前任者が積極的に行ったほうが良いことがあります。後任者のための下地作りとして、関係者への顔合わせや、周囲へ引継ぎをしている旨などを周知するなどのケアも欠かせません。
後任者が別の部署から異動してくる場合もありますので、その場合は後任者の所属元の上司にも了解をえておくようにします。そして関係先への紹介も、引継ぎを行う者が率先して機会を作り進めます。
事前の紹介もなしに後任者が関係先の担当者と顔合わせするのは、取引先にとってやや不安でしょう。また、担当が変わったことに関して先方が知らなかった場合、トラブルにつながる可能性もあるので、挨拶は徹底しておきたいところ。
前もって前任者が関係者の担当者に紹介し、後任者の特徴や正確、仕事ぶりを言葉で伝えることにより、後任者が業務をしやすくする環境作りも必要ですし、何よりも前任者が関係先に訪問し、異動や退職に際して、これまでお世話になったことに感謝を示すことは社会人として当たり前。関係先への訪問には時間が必要となりますが、前任者としての責任の範疇です。
引継ぎに関するマニュアル作成は、通常の業務と並行することがほとんどです。マニュアル自動作成ソフトを利用すれば、キャプチャや後から手直しする手間などを省くことができます。Dojo(ドージョー)を導入すれば、社内の資料作成がスムーズになるでしょう。ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
引継ぎマニュアル制作と引継ぎまでの流れ
引き継ぎマニュアルの制作や引き継ぎまでは、以下のような流れに沿って行いましょう。
引継ぎスケジュールの設定
引継ぎを行う業務を洗い出していき、いつ頃には引き継ぎをスタートしないといけないのかスケジュールを立てていきます。特に、社外の取引先や売り上げに関わってくる重要な業務については、しっかりと引き継ぎができるスケジュールを設定しましょう。
なお、引継ぎのスケジュールを立てる際には、タスクごとにスケジュールを決めることができるガントチャートなどのツールを活用するほうが間違いも少なくなります。
引継ぎマニュアルへの記載内容を決定
引継ぎスケジュールが確定したら引継ぎマニュアルに記載する内容を決めます。引き継ぎマニュアルには以下のような内容を記載します。
- 担当する業務の社内における位置付け
- フローチャートなどを使った業務の流れ
- 担当業務に関わってくる社内・社外の関係者の一覧
- 過去に発生した主要なトラブル事例とその対処法
- 担当業務に必要となる顧客情報などのデータ
引継ぎマニュアルの作成
記載する内容が決まったら引継ぎマニュアルを作成します。その際、自身の業務に関係ない部署の人でも理解できるように作成していくと、誰にでも分かりやすい引継ぎマニュアルが完成します。
そこで後任者に引き継ぎマニュアルを渡す前に、その業務に関係がない人でも理解できるかどうか、第三者に確認してもらうのも良いでしょう。
完成したマニュアルをチェックしながら後任者と打ち合わせ
引き継ぎマニュアルが完成したら後任者に渡します。ただ引き継ぎマニュアルを渡すのではなく、後任者と打ち合わせをしながら、業務内容を口頭でも説明していきます。
できれば余裕を持って引き継ぎを行い、前任者が離れる前に後任者が実際に業務を行い、疑問点や不明点などをチェックしてもらいましょう。そこでもし、引き継ぎマニュアルに記載しておいたほうがいい内容が発生したら、追記を行ってより分かりやすい引き継ぎマニュアルへとブラッシュアップしていきます。
マニュアル資料でスムーズなバトンタッチを
引継ぎ資料の作成と関係者先にも周知することにより、スムーズなバトンタッチが初めてできます。
業務の引継ぎは社会人としての責任です。会社や職場の人に不満があっても、最後まで仕事に責任を持ち後任者のことを考えて行動しましょう。
また、引継ぎに関するマニュアル作成は、通常の業務と並行することがほとんどです。マニュアル自動作成ツールを利用すれば、キャプチャや後から手直しする手間などを省くことができます。自動マニュアル作成ツールDojo(ドージョー)を導入すれば、社内の資料作成がスムーズになるでしょう。ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。