業務改善は、企業の利益向上に必要不可欠な取り組みです。不要な業務プロセスや課題を発見できれば、業務効率化やコスト削減につながり、組織全体の生産性向上につなげられます。しかし、業務改善の実施には上層部の承認が必要なケースも多々あるため、説得力のある提案書を作らなければなりません。
そこで本記事では、業務改善の提案書を作成する手順、記載すべき項目、提案を通すための注意点をご紹介します。業務改善の担当者の方や、提案書の書き方を知りたい方は、ぜひご確認ください。
1.業務改善の提案書を作成する手順
質の高い業務改善提案書を作るには、正しい手順を踏むことが重要です。以下の4ステップを参考にしてみてください。
1-1.【Step1】業務の課題を洗い出す
まずは各業務における問題点や無駄、従業員の業務負荷などを明確にしましょう。業務の課題を可視化することで、表面的な問題だけでなく、潜在的な改善点まで明らかになりやすいからです。
具体的なアクションとしては、作業効率が悪い業務プロセスやミスが発生しやすい箇所を整理することです。なお、フローチャートを用いれば業務の全体像や流れが一目で確認できるようになるので、自社の課題を発見しやすくなります。
1-2.【Step2】課題の改善方法を立案する
課題解決に向けて、具体的な解決策を決定します。業務の改善方法は多岐にわたるので、課題が生じている原因を特定した上で、自社に合った方法を選びましょう。具体的な施策例としては、以下が挙げられます。
・業務マニュアルの作成や業務改善ツールの導入
・業務自体の削減
・業務の外部委託
会社によって課題が発生する原因が異なるので、より自社に適した改善方法を模索しましょう。例えば「従業員の業務品質が低い」という課題であれば、考えられる原因は1つではありません。業務マニュアルが形骸化している場合や、タスク管理が不適切なことも考えられます。
1-3.【Step3】業務改善にかかる費用や期間を算出する
提案する業務改善策の実現可能性を判断します。「Step2」で良いアイデアが思い浮かんだとしても、かかる費用や時間が非現実的であれば実行には至りづらいからです。そのため、「Step3」では業務改善に必要な人員や作業時間、具体的なスケジュールなどを算出し、業務改善の費用対効果を明らかにしましょう。
1-4.【Step4】業務改善について提案書にまとめる
Step1~Step3で検討した業務改善案を提案書にまとめましょう。業務改善の内容が伝わりやすいように、順序立てて作成してください。なお、業務改善の提案書に記載する具体的な項目は、以下で詳しく解説します。
2.業務改善提案書の記載項目
業務改善提案書の作成で重要なのは、情報の網羅性です。ここでは記載すべき項目をチェックしていきましょう。
2-1.業務改善案の基本情報
最上段の書き出し部分には、業務改善提案書の基本情報を記載しましょう。具体的には、以下のような情報が必要です。
・提案したい内容が伝わるタイトル
・提案した日付や提案者の情報
・提案書の提出窓口および担当者
タイトルに関しては、「業務改善提案書」といった汎用的な名称も可能ですが、内容が伝わるようなものであれば、より読み手に親切です。
2-2.業務改善の提案の概要
業務改善策の全体像を簡単にまとめます。詳細に説明する必要はありませんが、以下の要素は記載しておきましょう。
・実施スケジュール(時期)
・対象となる業務プロセスと範囲
・プロジェクトの対象者
・改善策が必要な理由
・具体的なアプローチ
概要の書き方のコツとしては、5W1Hに沿ってまとめると分かりやすくなります。
2-3.業務の現状や問題点
次に、改善すべき業務の現状と問題点を記載しましょう。読み手に改善策の必要性を理解してもらうために、できるだけ客観的な記載を心がけてください。具体的には定量的な表現(数値・データなど)を活用して、明確で分かりやすい内容にしましょう。以下は、客観性を意識した記載例です。
・◯◯業務の属人化が進んでおり、担当者が休んだ際は業務がストップする
・昨年は◯回の業務停止が発生し、フォローに◯時間を要した
2-4.具体的な改善案
問題点を解決する具体的なアプローチや解決策を記載しましょう。重要なポイントは、問題点を解決できるイメージを読み手に持ってもらうことです。改善策の実施内容を時系列順に並べるなどして、誰が読んでも理解できる構成にしましょう。また、施策に実行可能性があることを説明しつつ、どのようにして後述の「予想されるメリットや効果」につながるのかを示してください。
2-5.予想されるメリットや効果
課題解決によって得られるメリット、期待される結果を定量的に示しましょう。以下の記載例のように、具体的な数字を用いてメリットの説明をするのが有効です。
・必要な人員が◯人まで削減され、◯割のコストカットにつながる
・◯◯システムの導入で業務が自動化され、作業量が◯%削減される
メリットや効果を明確に示すことで、提案書に魅力を感じてもらえるようになります。
2-6.必要な費用や期間
必要な費用や期間についても説明が必要です。具体的には、業務改善策を実施するためにかかる物品・サービスの購入費用、人件費、スケジュールなどを見積もり、現実的なプランであることを示します。このように必要な予算を明確にすることで、スムーズな案件着手が可能となります。
2-7.懸念されるリスク
想定されるトラブルやリスクを明記し、読み手の不安を解消しましょう。リスクまでしっかり見据えていることが伝わり、提案の思慮深さがアピールできます。また、リスクの回避や低減方法も併せて記載することで、上層部に提案が通りやすくなるでしょう。反対に、リスクを伝えずに提案した場合、トラブルが発生した際に責任問題となる可能性があるので注意してください。
3.業務改善の提案を通すためのコツ
ここまでは提案書の作成手順と記載項目を説明しましたが、上層部が納得しない限り、業務改善は実行されません。ここでは提案を成功させるためのポイントをお伝えします。
3-1.読み手の立場を意識して提案する
業務改善の提案書を「誰が」読むのか意識することは重要です。なぜならば、業務改善が行われる部署の業務内容に関して、社員全員が詳細に理解しているわけではないからです。そのため、提案書で伝えるべき内容や記載する項目を決める際は、読み手の職種を考慮してください。
読み手の具体例としては、経営層が挙げられます。経営層は現場での細かな作業手順・工程を把握していない可能性があるため、仕事の進め方を丁寧に説明する必要があるでしょう。一方で、読み手が業務の内容を理解している直属の上司であれば、詳細すぎる説明は必要ないケースも考えられます。
提案書を作るときには、読み手の視点を想定してアプローチを変えてください。
3-2.数字を用いて定量的に記載する
業務改善の提案内容を客観的かつ正確に伝えるために、可能な限り数字を用いて提案書を作成することが大切です。その際は金額だけではなく、問題の発生率や業務の工数などにも数字を用いると良いでしょう。
例えば、提案書の読み手を経営層と仮定すると、特に重要度の高い情報は業務改善の目的やゴールです。この場合、「業務効率化が実現する」といった抽象的な表現ではなく、「人件費が◯割削減される」といった見積もりがあった方が効果的だと考えられます。期待される成果が数値として記載されていれば、読み手によって認識がズレることもなくなるでしょう。
4.業務改善の提案書は正しい手順で作成しましょう
企業が業務改善を実施するメリットはさまざまで、生産性の向上、コスト削減、品質の向上などが期待できます。現場の意見を上層部にうまく説明することができれば、業務フローが改善される可能性があります。
ただし、上層部の意思決定を促すには、提案書が欠かせません。業務改善の必要性や実現可能性などを示せなければ、提案を通すことは難しいでしょう。提案書を書く際は、今回ご紹介したポイントを参考にして、適切な手順で作成するようにしてください。
【マニュアル作成ツールのDojo資料ダウンロード】 はこちら。