書式の作成や表計算による資料作成など、日常のあらゆる場面で必須となっているのがマイクロソフト社のエクセル(Excel)。以前はコンピューターが使える限られた人の常識でしたが、現在は、インターネット上でスマホやタブレットといったあらゆる端末でも無料で使える「Excel Online」もあり、使えることはスタンダードになりつつあります。
さらには先進的な企業では、エクセルそのものを使わず、表計算の各種ツール共通のさまざまな方法を駆使して、別のツールで編集や表示印刷、自動で行う分析など、人力ではなくコンピューター内部で直接考えさせ判断させるローデータ(Raw Data)として使用されています。自動で多人数、多数のファイルからのデータを取り出しやすいため、使われる分野も管理や事務、会計といった分野だけでなく日報、営業資料や技術資料など、ワープロが使えない人でも簡単に利用できる文書作成用としても便利です。
そこで今回は、全社員が使えるべきExcelのごく基礎部分の知識を、社内でいかに教育していくかについてご紹介します。
まずはエクセルの利便性や必要性を理解させる
エクセルを代表とする表計算で何ができるのか、と考えている人にはエクセルで行うことで、自分の業務や成果がどう違ってくるのかを理解してもらうのがいいでしょう。たとえば、エクセルに記録したデータによるグラフ化、集計、分析、データ抽出などを使った資料作成や書式の作成が挙げられますが、自社の業務や近しいものなどを挙げると、より身近なものとして認識されやすいです。具体的に利用が想定される範囲としては、下記のようなシーンが考えられます。
- 売上や現金などの入出金を、現場の担当者や経理にすぐに共有
- 現場での計測数の記録を、販売在庫などに共有
- 見積書から契約書、集計提出用などデータ共有
- 集計や分析結果をグラフ化してミーティングやプレゼンテーション資料に落とし込む
- 日時や案件別の記録データを、複数年分まとめて管理・共有
他にも企業によって様々な利用シーンがありますが、エクセルで出来ることやメリット、使う理由を明確にすれば自発的な取り組みも望めます。集計や分析の不備の発見や、関数を用いた効率的な表の作成など、各々で改善策を立てられるまでになれば会社全体の作業量を圧縮できるでしょう。単にメモ用紙を紙からコンピューターに変えただけというのではなく「よりしっかりとした内容で、かつ時短化」されるのです。導入時のコストはかかりますが、先行投資と考えて、教育体制と併せて検討する価値はあると思われます。
企業でエクセル教育~初級から実践のプランイメージ
1980年代から、このタイプのツールの中で最も多くの人に利用されて、世界的な標準となっているのがエクセルです。他の表計算ソフトもエクセルをお手本に作られているので、業務に使う基本ツールとしては申し分ないでしょう。コンピューターに不慣れな人でも、タイピングができれば業務にはついていけます。社外のセミナーもありますが、社内の詳しい者を講師として立てるほうが取り組みやすいでしょう。社内で行えば、講習時間以外でも聞くことができるうえに、社内でフォローアップする体制=社内でのキク・コタエル体制を作るという組織の人的メリットも作り出せます。
レベル別での教育内容は下記のようなものが望ましいです。
<初級>
- 文字入力
- 計算入力(四則計算など基礎的なもの)
- セルの概念
- ブック(ファイル)やシート、ブックやシート間参照の理解
- コピーペースト・検索などのコンピューターでよく使うショートカットキー
- 列や行の色分けと、検索方法など
- 行や列の編集
<中級>
- 簡単な集計用関数
- 置換と参照リンク
- 他のシートやブック、オフィスの中で入力データを参照する(自動で設定)
<上級>
- SUM、IFなどのセル内で使える関数
- ピボットテーブル(自動で設定)
- 複数ブックやデータからの集計一覧
- グラフ作成とグラフの種類
<総仕上げ~実践編>
- 実際に簡単な表を作ってみる(表とテーブル設定、レイアウト)
- オフィス連携でワードから印刷出力させる
- 普段の業務を想定して、経費精算表、提案見積もり契約実績表、設計用計測データ表や部材一覧など、管理部門で作成したフォーマットに数字を入力させてみて、使用感を確認させる
- 教えた関数を使って、自分にとって使いやすい表を作らせる
業務で使うエクセル関数をピックアップしてよく練習させておき、そのうえでさらに利用しやすくなる関数や組み合わせを提案して教えましょう。呑み込みの早い人には、ここでマクロの記録やその加工のさわりだけで出来てしまいます。スキルの習得には個人差があるので、eラーニングを用いれば、時間を問わず繰り返し学習できます。「Dojo(ドージョー)」ではeラーニングコンテンツの作成ができるので、社内教育のひとつとして取り入れてみてはいかがでしょうか。
研修はスキルを把握してグループ分けをする
すでに自宅で年賀状印刷や家計簿などでエクセルを使っている。関数や自動処理、簡単なプログラミングなどでエクセルを使っている。一方で、自宅にコンピューターない人や、携帯端末でしかIT機器の利用経験のない人、LinuxやMac、Windowsなどの機種とシステム種類では、教える項目自体にかなり差が出てきます。そのため、事前に自宅とオフィスでのコンピューターやマイクロソフトオフィス利用状況を調査し、さらに文字入力やショートカットキーなどの簡単なテストなどを行い、レベル別で教えられるようグループ分けしておくとよいでしょう。これによって、部門別の弱点や所属者の利用モデルなども見やすくなるほか、研修会の実施スケジュール~時間帯や曜日管理、施設利用・経費管理なども行いやすくなります。
エクセルで業務のクオリティを高めよう
末端の実務を行うひとたちにとっては、面倒な入力と思われる方もあるかもしれませんが、実は使い始めると、社内全員にとってメリットが多いエクセル。社内教育を進めていくと同時に、入力方法を簡素化するためのフォーマットづくりや、すぐに見えるツールのサーバ側からの提供、モバイル端末で簡単に入力できるようにするなど、社内でエクセルを快適に扱える環境の整備も大切です。
さらには、エクセルデータに全員が慣れて、データ数がそろって来れば、グループウェアに移行することも簡単。提供されている、Aiによるデータ分析機能などには、人の目が届かない経営や技術、販売に関する、あらゆるサービスにつながり使いやすくなるメリットもあります。社内のIT化には抵抗のある企業も多いかもしれませんが、これらも外部に委託せず、すべてを自社内で行い、分析のためのツールやそのための日時データを外から得るだけで自社からは一切外に漏らさず行うこともできます。この機会にぜひ、エクセル研修を始めてみてはいかがでしょうか。