新しい仕組みやツールを導入したり、新入社員が入社すると、いつも慌てて探したり「つくらないと・・・」となるのが、SOP(えす・おー・ぴー)やマニュアルです。
SOPとマニュアルはとても近しい言葉ですが、厳密には異なるもの。その違いと、それぞれを作成する際に留意すべきことをまとめてみました。
INDEX
SOP(Standard Operating Procedures)とは
SOP(Standard Operating Procedures)とは、作業内容や実施フロー(手順)について記述した指示書のことです。「SOP」という単語自体はあまり耳にする機会がありませんが、「作業手順書」であれば、馴染みのある方も多いのではないでしょうか?
Standard Operating Proceduresを直訳すると「標準作業手順書」になります。SOPはすでに確立している製品の質や使い勝手を担保するために、現場の状況や作業内容、その手順を事細かに記録し、正しく再現することを目的としています。
SOPとマニュアルの違い
SOPは馴染みが無くても、「マニュアル」や「操作手順書」であれば日常的に使っている、作っていると言う方は少なくないでしょう。
では、SOPとマニュアルにはどのような違いがあるのでしょうか?
SOPは日本語訳が「標準作業手順書」である通り、基本的な作業内容を手順通りに記したものになります。
一方、マニュアルは手順をただ並べるのではなく、一つ一つの作業の注意事項や、その作業を含んだ業務全体に関するノウハウなど、困ったときに役立つTips(助言、ヒント、秘訣など)も含みます。
誰が対象なのか、ターゲットで説明するのであれば、SOPはまだ作業に慣れていない、そのシステムの使い方を覚えていないなど、そのシステムやツールの習熟度の浅い人が、手順通りに進めていくために閲覧するものです。
それに対しマニュアルは、そのシステムやツールを使うすべての人が、「困ったとき」や「『もっと有効活用できないか』と考えたとき」にその解決方法やヒントを得るために開くものと言えるでしょう。
そういった意味では、「SOP」より「マニュアル」のほうが範囲が広い、ターゲットが広い・・・と言えます。
SOP作成の悪い例
ここで、SOP作成の悪い例を挙げていきます。SOPがこの例に当てはまっていないかどうか、作成後には必ずチェックしましょう。
文字だらけで読みづらい
SOPの対象となるのは、現在の業務担当者だけではありません。新しく入社してきた従業員や異動してきた従業員、アウトソーシング先など、対象業務に関してまだまだ深く理解しきれていない方も含まれています。そのため、文字だけでマニュアルを作成しても読み手に心理的負担を与えてしまい、結果的にマニュアルを活用してくれない、といった可能性があります。
SOPは業務内容をまったく知らない人でも理解できるように、わかりやすい構成にすることが必須です。後ほども詳しく解説しますが、文字だけでは伝わりきらない部分には図解や表、フローチャートを適宜活用して見やすいSOPになるように作成しましょう。
初心者にわからない専門用語が書いてある
先ほども少し触れましたが、SOPはその業務についてまだまだ理解しきれていない方も対象者として含まれています。そのため、業務担当者の間では当たり前に使用している専門用語をSOP内の文章にちりばめてしまうと、業務歴が浅い従業員が理解するスピードも遅くなってしまいます。
もちろん、業務を理解していくにしたがって覚えていかなければいけない専門用語もあります。その場合は専門用語の近くに注釈を入れるなど、初心者でも理解しやすいような配慮をしてあげると良いでしょう。SOPを新入社員やその業務のまったくの初心者が読む場合があることを考えると、難解な文章は適切ではありません。平易な文章で記述していくことを心がけましょう。
1つの業務作業を流れで追えない
SOPは「標準作業手順書」とも呼ばれる資料のため、業務内容を順番に記述していく必要があります。業務の順番があちこちに飛んでしまうと全体の流れをつかむことができないのでSOPとしての効果を発揮することができません。全体の流れを把握しやすいSOPの作成を心がけましょう。
SOP作成の良い例
先ほど解説した悪い例に対して、SOP作成の良い例を挙げます。作成済みのSOPが、ここで説明している良い例になっているかどうかも確認しておきましょう。
簡潔で読みやすい文章
SOPを作成する際に文章は必須になりますが、それぞれの文章が冗長になってしまうと読み手に負担がかかります。文章ひとつひとつを簡潔にして読みやすく整えておくことは、SOP作成において良い例だといえます。ひとつの文章に込める情報をひとつにする「一文一義」を意識することで、読み手が内容を理解するスピードが早くなるでしょう。
もし、どうしても文章が長くなってまとまりが無くなってしまいそうな場合は、要点をリスト化して箇条書きにすることも有効です。「この内容を担当者が読んだときにどこか引っかかる点は無いか」を意識しながら、文章を考えましょう。
画像や動画の適切な使用
SOP内に文章だけでなくイラストや動画を適宜入れることも良い例として挙げられます。細かな設定方法などはイラストや動画を使用することで、文章だけで説明するよりも理解度が上がるからです。
もちろん、むやみにイラストや動画を挿入しても、何が一番重要なのか伝わらず全体的にまとまりのない内容になってしまいます。「説明する内容をどのように表現すればいいのか」を念頭に置いて、適度にイラストや動画を使用しましょう。
図解やフローチャート、リストなどでわかりやすく整理されている
先ほども少し触れましたが、SOPにおいて図解やフローチャート、リストなどを活用することも良い例として挙げられます。文字数が少なくても、図解やフローチャート、リストに要点がまとまっていると、該当する業務全体の様子を把握しやすくなるからです。
ですが、ただ図表やフローチャートにするだけでは、十分に要点が伝わらない可能性があります。まずは「この業務内容の中で何を一番伝えたいのか」をリストアップし、伝えたい内容を明確にしてから図表やフローチャート、リストの作成に取り掛かりましょう。
手順が詳細に記載されている
SOPは、業務内容や進行上の手順について詳細に記す必要があります。良いSOPを作成するためには、SOP作成前に対象業務がどのように進んでいるのか詳細に把握し、SOP作成後には対象業務がSOPに記載した通りに進んでいるのかをチェックする必要があります。
また、SOPは「完成して終わり」というわけではありません。業務内容は時が経つと変化していくため、SOPに記載されている業務内容と実際に行われている業務が番ってくる場合があります。その際は、現在の業務フローに適した内容に修正していくことも良いSOPを作成するうえで必要な作業だといえます。
SOP作成のコツ
SOP(標準作業手順書)の作成のコツは、MECE(ミーシー:漏れなく重複なく)に作業内容を網羅し、正しく作業する順番に並べていくことです。
例えば、すでに多くの人が実践している通り、SOPをつくる必要のあるウェブシステム(ウェブブラウザ上で操作する何らかのシステム)をSOP作成者が使いながら、画面キャプチャを取得し、その画面ごとに操作方法をメモしていきます。次にクリックするボタンはどれか、どの操作が必須かなどが一番重要な要素となります。
大事なのは、ついうっかり画面キャプチャを撮らずに先に進んでしまったり、分岐があるのに忘れてSOP作成作業を終わらせてしまったりしないことです。先に述べたように画面キャプチャもMECEである必要があります。例え1ページ、一つのボタンのクリックが抜けただけでも、そこで実際の作業フローは途切れてしまい、わけがわからなくなってしまうシステムは少なくはないでしょう。
そのため、画面キャプチャを取得したらそのままエクセルのシートに貼り付けて・・・という風に、「画面キャプチャ」と「ファイルに添付」の同じような繰り返し作業を淡々と行うことになります。単調な作業故にケアレスミスが起こってしまうと最初から確認して・・・と、「誰でもできるけれどうんざりする苦痛な作業」にSOP作成作業は認識されてしまうのです。
マニュアル作成のコツ
マニュアル作成で重要なのは、多くの人のナレッジを集結させることです。先ほどのSOPとの違いにある通り、マニュアルだからこそ必要な要素は、ただ正確な手順を追うだけでなく、誰にでも役立つようなノウハウやヒントも一緒にまとめる事です。
そのため、SOPと異なりマニュアル作成者は誰でも良いわけではありません。ある程度そのシステムやツールを使い慣れている人ではないと、ノウハウは存在しないからです。
しかし・・・逆説的ではありますが・・・使い慣れてしまった故に、迷うところや躓き(つまづき)に気づかない可能性もあります。「どこで初心者がひっかかるのか」、「みんなが迷うところはどこか」などは、かえって初心者の方が気づくものです(その場でメモしないと忘れてしまうものなので、「マニュアルをつくる」ということを適度に意識することも必要かもしれません)。
よって、マニュアル作成は一人で行うのではなく、複数で担当したいもの。たたき台の上に「自分はここが難しいと思う」、「ここでこうすれば簡単だよ」と、初心者と習得者両者の意見が加わることが望ましいのです。
SOPやマニュアル作成作業を自動化
このように、SOP、マニュアル、それぞれに作るコツや作るときの注意事項がありますが、すべてを留意して作るとなると、それなりの工数が発生してしまいます。
SOPやマニュアルを作成する上での最大の問題は、それに必要とする稼働が主業務でない企業がほとんどで、意識的に時間を確保し工数をかけることが難しいという現実です。当初は業務効率を意識してSOPやマニュアルをきちんと作成したとしても、ちょっとしたシステム変更での更新に手が回らず、気が付いたら古い(現実に即さない/使えない)SOPやマニュアルになってしまっている・・・ということも珍しくは無いはずです。
また、課題意識を感じた、個人それぞれが必要なSOPやマニュアルを作ったため、企業として活かせなかったり、「あるはずなのに誰も知らない」と行方不明になったり、どれが最新ファイルなのか分からなくなることもあるでしょう。
そこでおススメしたいのが、ツールを使った“SOPやマニュアル作成の自動化”です。
ウェブシステムやパソコン内のアプリケーションを使いながら、自動的に画面ごとのキャプチャを取得し、それを取得順にファイルに添付してくれるツールがあればどうでしょうか?自動的に画面が変わる度、操作をする度にその記録をするので、MECEに画面キャプチャが撮影、正しい順番で整理できるのは間違いがありません。
また、「SOP/マニュアル自動作成ツール」であれば画面キャプチャをただ取得するだけではなく、SOPやマニュアルに適したテンプレート(フォーマット)機能を有し誰が作っても同じデザインに成型できたり、パワーポイントやワードファイルとしてだけでなく動画として書き出せたりするものもあります。